エミン・ユルマズ氏「2050年日経平均は30万円に」超少子高齢化の日本が劇的復活するワケ
なぜ日経平均が30万円になるのか
さて、これから日本が復活し、2050年ごろまで黄金期を迎えるとお話ししてきましたが、私の“日経平均30万円説”についても触れたいと思います。
失われた30年のデフレ時代、世界に類を見ない貯蓄率の高さから日本人は投資に向いていないと言われてきましたが、それは間違っています。デフレとはお金の価値が上がるということだから、この時の現金保有という日本人の経済行動は合理的で正しかったと言えます。
過去を振り返ると、日本人は投機している時代もあれば、投資熱がすごい時代もありました。江戸時代、世界に先駆けて米相場という先物市場を大坂(現在の大阪)で作ったのは日本人ですし、明治時代に値動きを示すローソク足のチャートを考案したのも日本人です。
これからインフレでお金の価値が目減りしていくことに気づけば、日本人は経済合理性に沿った動きをしていくはずです。つまり資産運用をするか、消費をするか。その端緒はすでに現れ始めています。
東証が利益を溜め込み再投資しないPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に改善策の開示と実行を要求したり、投資枠が拡大した新NISAが24年からスタートしたりしていますが、これらはあくまできっかけに過ぎず“機械油”みたいなものです。日本人が投資に向かう本当の引き金になるのは、やはりインフレだと思います。
私は、毎年3~5%のマイルドなインフレが発生する、という強気な相場設定をコロナのだいぶ前から言ってきました。
2100兆円ほどと言われる日本人の個人資産のうち、今株式が占める割合は10%程度ですが、これがもし20%になれば、210兆円が株式市場に流れ込むことになります。200兆円のお金が入ってくるだけで、日経平均は簡単に10万円まで行くことでしょう。
1990年のバブルの時は最大で30%まで行きました。私はこれから10年、15年くらいかけてそれくらいの割合まで行くと見ています。そうなると、500兆円から600兆円ほどの日本人のお金が日本の株式市場に流れ込んでくるでしょう。「日経平均30万円」というのも今後のインフレを計算すれば、荒唐無稽な話ではないのです。
では“日経平均30万時代”に、日本人の給料、所得はどうなっているでしょうか。今、日本人の賃金が上がらないのは、日本の多くの経営者はインフレがずっと続くと思っていないからです。
今年はインフレの影響で値上げして商品の価格が5%上がった。当然、売り上げも5%上がります。しかし、来年もそうなると思っていないから、経営者は賃上げに躊躇している訳です。日本の企業では、賃上げなど一度決めた従業員への待遇は元に戻せないと思っているから、大手企業もボーナスは出したがるけど、ベースアップはしたがらない。
これもマインドの問題で、これから毎年5%くらい商品を値上げしなくてはならないとなると、従業員のベースも5%くらい上げないといけなくなります。しかし、まだその段階には来ていません。だから、賃上げは政府の働きかけとかはあまり関係ないのです。これも時間の問題だと思っています。
あと20年くらいしたら、5万円紙幣が出てくるかもしれません。日経平均30万円時代の新卒初任給は、100万円くらいになっていてもおかしくありません。多くの仕事がなくなっていく時代に、新卒という概念が存在しているかは不明ですが。将来への心構えをしておくべきだと私は思っています。
▽エミン・ユルマズ(エコノミスト、グローバルストラテジスト)トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1997年に日本に留学。1年後に日本語能力試験一級を受けて、東京大学理科一類に合格。その後、同大学院で生命工学修士を取得。2006年、野村證券に入社。投資銀行部門、機関投資家営業部門に在籍後、16年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。『コロナ後の世界経済』『エブリシング・バブルの崩壊』(ともに集英社)など著書多数。