国立に「トラック残して」コー氏の“甘言”が招く莫大維持費
IOC(国際オリンピック委員会)の重鎮が無理難題を吹っ掛けた。
世界陸連会長で、東京五輪の調整委員も務めるセバスチャン・コー氏(64)が8日、東京五輪メインスタジアムの国立競技場を視察。最新鋭の技術が結集した高速トラックなどを確認すると「選手が最高のパフォーマンスを発揮できるだろう」と満足そうに話し、「世界選手権を日本でまた開催したい。できればトラックやウオームアップエリアを維持してほしい」と、1991年東京、2007年大阪大会以来の実施を示唆したうえで、東京五輪後の施設維持を注文した。
陸上の世界選手権開催にはトラックや客席などの条件が定められており、レースを控えた選手が練習するウオームアップエリア(サブトラック)の設置が義務付けられている。国立競技場は一時、ウオームアップエリアの常設を検討したが、建設費や維持費を抑えるため、東京五輪は仮設で間に合わせることになったいきさつがある。同エリアは五輪閉幕後、イベントホールなどの跡地利用が決定している。
建設費約1529億円を投じた国立競技場の維持費は年間20億~30億円かかると見積もられている。コー会長の意向をくんで世界選手権を開催するため、ウオームアップエリアを残し、高速トラックを維持すれば当然、維持・管理費はさらに膨らむ。