BOOKレビュー
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「私のフルトヴェングラー」宇野功芳著
20世紀を代表する偉大な指揮者のひとり、ドイツのフルトヴェングラーの音楽を論じた評論集。 ブルーノ・ワルターと人気を二分していたフルトヴェングラーは、第2次世界大戦前夜、ベルリン・フィルの常…
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「小説 外務省Ⅱ」孫崎享著
2013年秋、外交官の西京寺はイラン大使館への異動を命じられる。尖閣問題で、「日中間に棚上げの合意はない」という政府や外務省の見解に背いた発言を内外に発信してきたための左遷人事は明白だ。出発の準備を…
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「狩猟家族」篠原悠希著
内定していた就職先が倒産し、働く前から失業者になった遼平は、卒業旅行にニュージーランド南島に向かう。現地でトレッキング中に道に迷い、途方に暮れていた遼平の目の前にライフルを持った少女が現れる。彼女は…
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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」岩崎夏海著
高校に入学した夢は、友人の真実に勧められ「もしドラ」を手にする。聞くと、新任教師の文乃が実はその本の作者だという。ドラッカーの理論によって弱小野球部が活性化するストーリーに魅せられた真実は、自分も野…
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「『かぐや姫』誕生の謎」孫崎紀子著
日本最古の物語「竹取物語」の謎に迫ったノンフィクション。 大きな謎のひとつはその作者であるが、著者は菅原道真の孫・文時の名を挙げる。宮廷で全国の神社の神階やなまりを正しくする仕事に携わってい…
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「ブロッケンの悪魔」樋口明雄著
山梨県警南アルプス署山岳救助隊の隊員・夏実は、シーズン中、白根御池小屋に隣接する警備派出所を拠点に遭難者らの救助にあたっている。大型台風が接近したある日、夏実は登山道ですれ違った屈強な2人組の登山者…
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「おしょりん」藤岡陽子著
明治33(1900)年4月、麻生津村の庄屋・五左衛門が経営する羽二重工場は、火事で取引先の機織り業者を失い倒産してしまう。工場は五左衛門が、弟の幸八の助言を受け、村に産業を興すために2年前に建設した…
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「真説 真田名刀伝」東郷隆著
真田家の宝刀「茶臼割り」の数奇な運命を描く戦国時代小説。 天文3(1534)年、信濃・上野国を治める海野家の傍系の三男・能登守輝幸は、諸国行脚中に常陸国での野試合で、相手を叩きのめし、太刀を…
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「新任巡査」古野まほろ著
愛予県警の警察学校を卒業した頼音(ライト)と希(アキラ)は、愛予署で3カ月の職場実習を受けることに。赴任日、挨拶のため入室した本多署長の執務机の上には、捜査中の女子生徒連続失踪事件の3人の被害者の写…
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「『男はつらいよ』の幸福論」名越康文著
映画「男はつらいよ」は、主人公の寅さんが、マドンナに惚れて、最後はフラれるだけの映画だと思ったら大間違い。実は寅さんは、現代の私たちにこれからどう生きるべきかを示してくれていると説く精神科医がつづっ…
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「邪し魔」友成純一著
ダイビングのインストラクターの良治は、インドネシアのバリ島で売春宿に入りびたりの日々を送っていた。7年前、客だった恵子と結婚し、日本でダイビングショップを営む良治だが、女遊びが忘れられず、出張所の開…
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「あなたという国」ドリアン助川著
ミュージシャンの拓人は、メジャーデビューしたものの売れず、レコード会社との契約を打ち切られバンドも解散。母親の死をきっかけに、現状を打破すべく、ニューヨークで暮らし始める。2001年、語学学校に通い…
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「ハンター・キラー」T・マーク・マッカーリー中佐、ケヴィン・マウラー著、深澤誉子訳
米空軍の遠隔操縦航空機(軍用ドローン)の元パイロットによる手記。 2003年、非戦闘部隊への配属を迫られた著者は、戦争にじかに貢献したいと戦闘任務「RQ-1プレデター」に異動を志願。しかし、…
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「古書泥棒という職業の男たち」トラヴィス・マクデード著、矢沢聖子訳
マンハッタンの書店街「ブック・ロウ」で20世紀初頭に起きた盗本事件をテーマにした犯罪ノンフィクション。 1926年ごろから約5年間、「ブック・ロウの窃盗団」が暗躍。驚くべきことに窃盗団のリー…
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「乳房に蚊」足立紳著
売れないシナリオライターの柳田は、家計を支える妻のチカに頭が上がらない。結婚して10年、愛情はほとんど残っていないが、セックスの相手はチカしかいない。しかし、チカをその気にさせるのは難しく、強引に持…
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「分断社会を終わらせる」井手英策、古市将人、宮﨑雅人著
財政問題から、分断された日本社会の閉塞状況を分析し、打開策を提示するリポート。 政府は景気対策のために多額の借金を財源に組み込み、都市中間層向けの所得減税と地方向けの公共投資を続ける代わりに…
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「蛮政の秋」堂場瞬一著
新聞社の社会部記者・南に舞い込んだ情報提供のメールに、大手IT企業から与党議員への違法献金と思われるリストが添えられていた。リストに記されているのはメディア規制法案に積極的な議員ばかりで、同社による…
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「エデュケーション」増田晶文著
就職活動に疑問を抱いた友杜は、小学校の教員だった亡兄との約束を思い出し、理想の小学校をつくろうと決意する。その壮大な夢に賛同してくれた親友の壮太やサークル仲間の大輔や浩樹、後輩の美咲も加わりプロジェ…
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「偽装中流」須田慎一郎著
安倍首相は、「分厚い中間層」の復活を念頭に2020年に向けて「1億総活躍社会」なるスローガンを打ち出しているが、格差の拡大、二極化が進む現状で再び「分厚い中間層」をつくり出すことは不可能だと著者は指…
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「代表的アメリカ人」ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ著、富山英俊訳
20世紀前半に活躍したアメリカの詩人による異色歴史エッセー。 コロンブス以前に新大陸に到達したバイキングに始まり、コロンブスはもちろん、アステカを征服したコルテスやスペイン系征服者、そしてエ…