BOOKレビュー
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「『大正』を読み直す」子安宣邦著
「大正デモクラシー」の発火点を、近代日本最初の民衆騒擾「日比谷事件」(1905年)とすると、「米騒動」(1918年)をその結節点と見ることができる。こうした歴史的局面で、集合し抗議の意思表示をする不特…
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「葵の月」梶よう子著
志津乃は、継母の時世が進める信吾郎との縁談に乗り気がしない。かつてのいいなずけ・蒼馬が忘れられないからだった。父の惣太夫は、将軍世嗣・家斉が居住する西丸の書院番組頭で、蒼馬は父の配下で働いていた。 …
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「コレ、嘘みたいやけど、全部ホンマの話やねん」コラアゲンはいごうまん著
やくざの事務所に1カ月寝泊まりしたり、新興宗教の集会に参加するなど、課せられたテーマに挑んで体験した出会いやエピソードを語る「実録ノンフィクション漫談」芸人によるネタ話集。 2010年末、自…
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「上江洲義秀の解答 『気づき』をあなたに」ラウル イクセンバーグとスピリチュアル研究班編
「蓮の花をイメージすると明想(瞑想)が進みやすいというのは本当ですか」という問いに対して、「泥沼に咲く蓮の花は、悩み苦しみという泥を肥料として大きく美しい花が咲く(悟りを開く)という仏教の教えの象徴で…
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「〈花〉の構造」石川九楊著
万葉集から現代の流行歌まで、日本人は〈花〉に託して、四季の移ろいや男女の愛を歌ってきた。本書は、日本語の歴史とともに歩んできた〈花〉の本質と広がりを考察する日本文化論。 多くの人が雑草がつけ…
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「北極大異変」エドワード・シュトルジック著、園部哲訳
数十年前まで、北極地域に領土を有するカナダ・米国・ロシア・ノルウェー・デンマークの北極海沿岸5カ国は、北極圏の領有権が不明な地域には関心を示さなかった。 しかし、温暖化による解氷で船の航行が…
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「ニセモノの妻」三崎亜記著
新婚の私は、妻の両親の勧めと資金援助で新築マンションを購入。引っ越したその日に、住む街を下見しようとジョギングに出た私は、帰路、マンションを見上げて戸惑う。8階の自分たちの部屋にしか明かりがともって…
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「死仮面」折原一著
雅代の部屋で週末だけ一緒に暮らす内縁の夫・麻里夫が突然死する。遺影に使える写真もなく、雅代は友人に勧められ、人形師の三田村に亡夫の仮面の制作を依頼する。麻里夫が勤務していた学校に連絡すると、そんな名…
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「辛夷の花」葉室麟著
九州豊前、小竹藩の勘定奉行、澤井家の隣に木暮という武士が引っ越してきた。木暮は、藩主・頼近に気に入られ、郡方から近習に取り立てられたという男だった。 嫁ぎ先の船曳家で姑にいびられ、出戻った澤…
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「昭和の東京 映画は名画座」青木圭一郎著
青春時代に足しげく通った名画座の思い出と、各館の歴史をつづったシネマエッセー。 昭和39年、中学3年生のときに見たリバイバル公開の「戦争と平和」で映画に開眼。やがて、池袋の日勝地下(座席数2…
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「緑衣のメトセラ」福田和代著
フリーライターのアキは、幼馴染みの千足から、近所の高級老人ホーム「メゾンメトセラ」の入居者はがんの発生率が高いという噂を聞き、興味を抱く。ホームは隣接する不破病院が経営。院長の不破は、アンチエイジン…
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「人工知能は私たちを滅ぼすのか」児玉哲彦著
プロ棋士を圧倒するなど、性能が飛躍的に向上している人工知能が、新たなパラダイムシフトを世界にもたらそうとしている。開発者たちのゴールは、人間と同じように考えたり感じたりする心を持った機械を実現するこ…
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「大麻解禁の真実」矢部武著
日本では大麻を所持するだけで逮捕されるが、欧米では、合法化、非犯罪化が進んでいる。本書は、米国の対麻薬戦争や、日本の麻薬対策の現場をリポートしながら、両国の麻薬規制への考え方の違い、そうした規制を生…
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「不惑のスクラム」安藤祐介著
入手した錠剤を手に、死に場所を探して江戸川にたどり着いた良平の前に、楕円のボールが転がってきた。河川敷のグラウンドで中年ラグビーチームが練習中だったのだ。近寄ってくる老ラガーマンを追い払おうと、良平…
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「肉筆で読む作家の手紙」青木正美著
古書店主の著者は、作家らの書簡や原稿など多くの自筆物を収集。まずはその収集の始まりとなった島崎藤村の最晩年の手紙を取り上げる。 昭和17年4月、71歳だった藤村が谷崎潤一郎とも交遊があった大…
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「真実の檻」下村敦史著
母の遺品を整理していた大学生の洋平は、天井裏に隠してあった手紙を読み、自分の本当の父親が赤嶺という男だと知る。育ててくれた父に確認すると、赤嶺の存在を承知で身重の母と結婚したらしい。洋平は父から赤嶺…
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「アストロバイオロジー」山岸明彦著
アストロバイオロジーとは、地球外のどこかにいるかもしれない生命体についてあらゆる角度から研究する学問。本書は地球外生命の可能性を論じながら、アストロバイオロジーの最前線を紹介するサイエンステキストで…
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「『マイナンバー』が日本を壊す」斎藤貴男著
運用が始まったマイナンバー制度の問題点を指摘した警世の書。 マイナンバーは、そもそも「消えた年金」問題をきっかけに、「社会保障と税の共通番号制度」として導入の検討が始まったのだが、それがいつ…
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「世界の学者が語る『幸福』」レオ・ボルマンス編、猪口孝監訳、藤井誠二ほか訳
世界50カ国の研究者が、それぞれの視点から幸福を見つけ、それを維持するための方法を説いた幸福論集。 デンマークの経済学者クリスチャン・ビョルンスコフ氏は、人は経済的・政治的変化に驚くほど早く…
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「恩讐の鎮魂曲」中山七里著
人殺しの過去を法廷で暴かれ、仕事が激減した弁護士の御子柴は、医療少年院で世話になった教官の稲見が殺人容疑で逮捕されたことを知る。老人ホームに入所していた稲見が、介護士の栃野を花瓶で殴って殺したという…