「つげ義春 夢と旅の世界」つげ義春・山下裕二・戌井昭人・東村アキコ著
漫画界の鬼才、つげ義春氏のデビュー60周年を記念して刊行されたビジュアルブック。作品原画の他、本人へのロングインタビューや各界の著名人のエッセーなど、立体的構成でその独特の作品世界を案内する。
つげ氏が日本美術史上で一番好きな作家だと語る美術史家の山下氏によると、1968年に発表された代表作のひとつ「ねじ式」は、「史上初めて夢をダイレクトにマンガに反映し、しかも周到な脚色を加えた作品」だという。
その「ねじ式」とともに、夢を忠実に再現した79年発表の「外のふくらみ」のカラー原画を収録。「つげ作品に通底する、その制作の根幹を支えている『夢』」を切り口に、作品の魅力に迫る。
「ねじ式」について作者自身は以前、「締め切りに追われてただ夢をそのまま描いただけ」と謙遜していたそうだが、インタビューでは「どんな芸術でも、最終的に意味を排除するのが目標だと思っているんですよ。なので意味のない夢を下敷きにした一連の夢ものを描いたり夢日記をつけたりしていたんです」と作品について語っている。