「風花帖」葉室麟著
享和3(1803)年、九州・小笠原藩の江戸屋敷側用人菅家の嫡男・源太郎と書院番頭杉坂家の三女・吉乃の祝言が行われる。吉乃の親戚の新六は、祝いの席で、家老の兵庫から自分の派閥に入るよう命じられる。新六の亡父はかつて兵庫の政敵・出雲の派閥に入っており、周囲の人間には兵庫の真意が分からない。3年前のある出来事から、吉乃を生涯かけて守ると心に誓う新六は、以来、源太郎の屋敷で開かれる派閥の集まりに顔を出すようになった。しかし、兵庫が失脚。藩内は息を吹き返した出雲が権力を握り、旧兵庫派との軋轢が激化。そのはざまに立たされた新六は苦悩する。
運命に翻弄される男女の哀切を描いた長編時代小説。
(朝日新聞出版 1500円)