「日本の『運命』について語ろう」浅田次郎氏
「ぼくらの世代以降は、歴史を正しく教わっていません。近現代は授業でやらなかったし、最近は高校の日本史が選択科目になっている。従軍慰安婦も靖国神社も、何のことかわからない人が多くなってしまいました。でも、そういう基礎的な知識が欠如していたら、外国人とつきあえないし、外交もできません。ぼくはこれまで欠落した150年の日本の歴史を勉強して小説を書いてきましたが、そこでこぼれた話をお伝えしてきた講演録が今度の本です」
小説誕生にまつわるエピソードが興味深い。「地下鉄に乗って」の背後には父の出征シーンがあり、自衛隊にいたとき知った占守島の戦いが、「終わらざる夏」に結実している。
「ぼくはね、『普通に考えたら、どうか』というのを大事にしてるんです。歴史は、自分たちの都合で善か悪か判断してはダメですよ。むしろ成功か失敗か、客観的に考えることが必要です。食堂で何を食べるか、誰と恋愛するかも『普通に考えたら』わかるんですよ。日本が大陸に侵略したのも、『普通に考えれば』それなりの事情があっただろうし、これはひどい、という事実もあります」