俺の時代はまだ終わっていない
「ウサイン・ボルト自伝」ウサイン・ボルト著、生島淳訳
ジャマイカのトレローニーは、緑ゆたかな農村地帯。この地に生まれたウサインは、幼いころからエネルギーに満ちあふれ、1秒たりともじっとしていないヤンチャ坊主だった。野生林を遊び場にのびのび育った少年は、どのようにして「世界最速の男」になったのか。ウサイン・ボルト自身が、その半生を開けっ広げに語っている。
ジャマイカは陸上が盛んな国だが、自分から陸上選手を目指したわけではない。クリケットに夢中だった小学生のウサインにスプリンターの素質を見いだしたのは学校の先生だった。先生の目に狂いはなかった。自国のレースで頭角を現し、15歳で世界ジュニア選手権200メートルの王者になった。
ところが、ウサインは練習嫌い。コーチは厳し過ぎるとこぼし、練習をサボってはゲーセンに入り浸る。高校では学業成績が振るわず、留年寸前。それでもレースには勝ち続け、活躍の場を世界に広げていく。天賦の才に加えて「負ける自分が金輪際許せない」という負けず嫌いがウサインを強くした。脊椎側弯症と診断され、しばらくレースから遠ざかったが、コーチや医師の支えもあって、自分の肉体と向き合い、スプリンターとして目覚めていく。