核放棄は不可能!?北朝鮮エリート外交官が暴露
脱北者による北朝鮮内情についての証言は、これまでに数多くあった。しかし、太永浩著、鐸木昌之監訳「三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録」(文藝春秋 2200円+税)につづられた内容はレベルが違う。
なにしろ著者は、北朝鮮のエリート外交官の中でもトップ中のトップ。タイトルにもなっている三階書記室とは、かつては金正日が、そして現在は金正恩が執務を行う3階建ての建物のことで、アメリカならホワイトハウスにあたる場所。著者はこの三階書記室からの指令を直接授かる立場にもいた人物なのだ。
米朝首脳会談を重ねてもいまだ明らかな核兵器開発の放棄がなされていないが、本書を読めばその背景も分かってくる。北朝鮮が核開発に固執するのは、朝鮮戦争のトラウマであると著者はみている。
当時、北朝鮮国民の多くがアメリカによる原爆投下に恐怖を覚え、韓国に避難するという事態が起きた。金日成は、国民が南へ逃げていくことを止められない恐怖感とともに、核兵器の持つ心理的威力を痛感。自らの体制を護持するためにも、核保有しかないと決意した。その思いが現在の金正恩まで受け継がれているため、体制の転換でもない限り、北朝鮮が核を放棄することは不可能なのだ。
金正恩の生母は元在日朝鮮人で、金正日の愛人の立場だったことから、自身の生年や生母を公式発表できないコンプレックスがある。それゆえに恐怖政治に走っていると著者。一方で、現在の北朝鮮には闇市を通して中国製メディア・プレーヤーや携帯電話が流入。これらのツールによって、もはや従来のような情報秘匿や洗脳教育は通用しなくなっているという。
北朝鮮外交の源泉と未来が分かる衝撃の暴露本だ。