ちまたにあふれる呪いの言葉を無効化する思考方法
私たちの身の回りには、思考や行動を縛る「呪いの言葉」がある。例えば、長時間労働やパワハラに悩む者に対する「嫌なら辞めればいい」という言葉。生活を考えれば簡単に辞めることはできず、「それができれば苦労はしない」と誰もが思うだろう。
しかし、この時点であなたは呪いにかかり、相手が設定した枠組みに捉えられている。上西充子著「呪いの言葉の解きかた」(晶文社 1600円+税)では、世の中にあふれる呪いの言葉を無効化する思考方法を考えていく。
「嫌なら辞めればいい」という言葉は、働く者を追いつめている側の問題を隠し、問題を指摘する者を「文句」を言う者と位置づける呪いの言葉だ。「辞めればいいと言われても……」と自分が悪いように考えた時点で、あなたは呪いにかかり始めている。
これにとらわれないようにするためには、相手の土俵に乗らないこと。そして、心の中で「あなたは私を逃げ出せないように縛り付けておきたいのですね」と問い返してみよう。そうすることで、一時的にせよ呪いの言葉の呪縛から精神的に距離を置くことができ、問題を捉えなおして柔軟に行動することができるようになるはずだ。
「できない」と言えずに状況を打開できず、「仕方がない」と状況を背負い込んでいくことは、非常に危険だ。そして、問題を背負い込ませているのが呪いの言葉。労働問題で追いつめられるサラリーマンにも、暴力的な恋人から逃れられない女性にも、ネグレクトをする親にも共通していることだと本書。呪いの言葉に負けて問題を自分の中に閉じ込めてしまわずに、「できない」と声を上げ、適切な助けを求める行動を起こそうと説いている。