「むかしむかしあるところに、死体がありました。」青柳碧人著
三条右大臣家の春姫が存生祭りの帰り道で鬼に襲われた。家来の一寸法師が針の刀を振り回したが、鬼につまみ上げられ、のみ込まれた。
一寸法師は鬼の腹の中で針の刀を突き立てたため、鬼は降参して一寸法師を吐き出し、体を大きくしたり小さくしたりできる打ち出の小槌を置いて逃げていった。一寸法師はこの小槌を使って大きくなり、春姫の婿になることに。
2日後、婚姻のうたげのときに、検非違使の手先と名乗る男がやってきた。上栗村で三条右大臣が庶民の女に産ませた冬吉という男が殺されたという。その家の戸は一寸ほどの隙間があった。だが、冬吉が死んだのは一寸法師が鬼の腹の中にいた時刻だ。(「一寸法師の不在証明」)
このほか、「花咲か死者伝言」など5編の昔話ミステリー。
(双葉社 1300円+税)