「涙の招待席 異形コレクション傑作選」井上雅彦編
井上氏が14年をかけて編んだ全48巻のアンソロジー(1240作品)からとっておきの涙を誘う作品を抽出した傑作選。
久志は、母校の村の分校がダムの底に沈むと知り、仕事を休み、車を走らせる。分校は、久志が6年生の時に廃校になり、以来、21年ぶりの訪問だ。村全体が見渡せる峠の展望台で、分校の最後を見送ろうと車を降りると、同じ分校に通っていた仲間たちが出迎えてくれる。みな、思いは同じようだった。昔話に花を咲かせていると、この場にはいない、最年少だった子の話題になる。その存在を皆が覚えているのに、なぜか名前が出てこない。埋めたタイムカプセルのことを思い出した久志らは湛水が始まった村に下りていく。(梶尾真治著「再会」)
(光文社 660円+税)