「みんなイヌ、みんなネコ」sippo編集部編著
空前のペットブームの一方で、日本では年間計約4万3000匹もの犬猫が殺処分されているという(平成29年度)。近年、各地の自治体やボランティア団体によって、野良猫や飼育放棄されたペット、そして殺処分予定の犬や猫を施設から保護して、新しい飼い主を探す活動が定着しつつある。本書は、そうして新しい家族との出会い、第二の人生ならぬ第二の「犬生」「猫生」を得た元保護犬や保護猫たちの写真集。
生後2カ月のときに保健所で安楽死寸前のところを「レスキュー」された犬のデイジー(写真①)は、生まれつき前足が不自由だった。
もらわれにくい障害犬を飼うと決めていたシーナさんは、団体のサイトで慣れない車椅子を使って一生懸命歩いている姿を見て、会いに行く。初対面の感想は、正直ちょっとブサイクだと思ったが、ボランティアに抱かれて寝ている姿を見て、優しい子だと感じて、デイジーに決めたという。共に生活するには工夫が必要なこともあるが、それも楽しみのひとつで、充実した毎日だと記す。
山で暮らしていたところを保護された猫の「くまお」(写真②)。そのユニークな「ドロボーヒゲ」模様の写真に魅せられた現在の飼い主が、「お見合い」を経て自宅に迎え入れた。「くまぉ母」さんは、「おじさんみたいな顔だけど、心は少年のくまお。大人の保護猫を迎えるのに最初は慣れてくれるか心配でしたが、とても時間をかけてじわじわと距離が近づいていく楽しさは想像以上でした」と保護猫を飼うだいご味を語る。
くまおは今では、後から迎え入れた妹分の「こぐま」の教育係も務める、頼もしいお兄さんになったという。
他にも、生まれて間もなくコンビニのゴミ箱に捨てられていたところを保護されたサバ白猫の「よもぎ」、ブリーダーにケージの中で身をかがめて飼われていたため、保護時にはガリガリに痩せて両下肢に大きな座りだこができ、感情を表すこともなく終始無表情だったというフレンチブルドッグの「豆福」(写真③)、福島の被災地で保護された仲良しカップル猫「みかんと春男」など。身勝手な人間によって危うく奪われそうになった命が、ぎりぎりのところで救われ、ようやく安寧の居場所を得た犬や猫たち。その命のリレーと、出会いのドラマを各飼い主たちがつづる。
虐待に遭っていた、外で倒れていた、授乳期に保護された「くらら・ルカ・珊瑚」(写真④)の3匹の保護猫と暮らす「sangoruka」さんは、「過去にあなたたちを傷付け捨てた『人間という生き物』をもう一度信じてくれてありがとう。お互いに慈しみ支えあうあなたたちの姿から、たくさんの幸せと気付きをもらっています」と愛猫にメッセージを送る。
ペットを家族に迎えようとしている人たちに、ショップに足を運ぶ前にぜひとも保護犬・保護猫との暮らしを選択肢のひとつとして考えてほしい。それが「普通のこととしてもっと広がれば、不幸な犬や猫を減らすことにつながる」というメッセージを込めて作られた写真集。
(パイインターナショナル 1300円+税)