「俳句は入門できる」長嶋有著
著者は「俳句は打球、句会が野球」という。つまり俳句は、素振りを繰り返す野球選手のように、1人でもできる仕組みを備えている。同時に句会で他者の作品を批評し、語り合うなど、他者ともできる仕組みも持つ。1人で新聞の投稿欄などに投句し続けるのは打球の精度を競うことにすぎず、そこには野球の醍醐味(だいごみ)はないともいう。本書は小説家として活躍する一方で、24年間、俳句活動を続け、テレビで選者なども務める著者が、俳句界の特殊な空気や独自のルール、雰囲気、そして魅力をつづった俳句エッセー。
季語でもある凧(たこ)揚げを体験する句会や、俳句仲間と旅行中に豪雨で被災した中でも生まれる俳句など、縦横無尽の語り口から俳句への愛とその面白さが伝わってくる。
(朝日新聞出版 790円+税)