「世界一楽しい!万葉集キャラ図鑑」岡本梨奈著
新元号の出典として、にわかに脚光を浴びた万葉集だが、現代人にはやや縁遠い存在である。しかし、著者は万葉集はいわば「時代をこえたSNS」であり、食わず嫌いは、もったいないという。
というのも、万葉集には高貴な人々が詠んだ歌だけでなく、農民や防人とその家族など、名もなき庶民の和歌が多数収録されており、おのおのが好き勝手に詠んだものがそのまま残っているからだ。そんな一般人の和歌は、約4500首のうち約2000首にも及ぶ。
本書は、万葉集の有名な和歌はもちろん、そうした庶民の歌など41首を取り上げ、解説してくれる入門ガイド。
全20巻の巻頭を飾る和歌は、雄略天皇が行幸(みゆき=おでかけ)の際に丘で出会った青菜を摘む少女に名前を尋ねる歌。当時、男性が女性に名前を尋ねるという行為は「求婚」の意思表示であり、この和歌は、つまり天皇が「ナンパ」する歌だという。
他にも、酒をこよなく愛した大伴旅人が詠んだ酒を褒め称える13首のひとつ「生ける者(ひと) 遂にも死ぬる ものにあれば この世にある間は 楽しくをあらな」(生きている人は 最後は死ぬ ものであるので この世にいる間は 〈酒を飲んで〉楽しくありたいものだ)をはじめ、のぞきが趣味の男が詠んだ歌や、歌垣(野外で行われる乱交パーティーのようなもの)に参加した男が自分の妻を再評価した歌など。現代人と変わらず、愛や人生を楽しんだり、悩んだり、そして人との別れを悲しんだりする万葉の人々の姿がそこにはある。
大和国に君臨する「Mr.エンペラー」やアイドルの「TENMU」など、各和歌のイメージをキャラクター化したマンガなども添えられ、万葉集がより身近に感じられる工夫が満載。
(新星出版社 1200円+税)