坂崎重盛(エッセイスト)
11月×日 俳句歳時記や季語集の類の本が目にとまると、つい入手してしまう“悪癖”がある。
人から句会に呼ばれたり、友達と句会を催したりして、初心者なりに句を作ることを楽しんだりしはじめたころは、ハンディーな季語集と文庫版の俳句歳時記を手元に用意するだけだったのが、あるとき、今は禁じられている「焚火」の俳句をできるだけたくさん集めてみようとへんな出来心を抱いてしまったことをきっかけに、このての本に手が伸びることになった。
そんな流れの中で、たまたま書店の棚で目にして、(ほう、こんな季語辞典もあるのか。まぁ、買っておこう)と手にしたのが、「絶滅寸前季語辞典」と、その続刊「絶滅危急季語辞典」。著者は女流俳人の夏井いつき。
(面白いタイトルの季語集だなぁ)と思って入手したのだが、このとき、ぼくは、この著者の名は知らなかった。7、8年前のことだろうか。
ところが今日、この夏井いつきという名は、日本で一番有名な俳人ではないだろうか。例のテレビ番組「プレバト!!」で司会の浜田雅功や梅沢富美男といったタレントを相手に俳句の手引きや辛口の評価を下す。
この「プレバト!!」での夏井先生の大ブレイクにより、俳句の世界に興味を持った人は少なくないようで、先に紹介した夏井先生による「絶滅寸前」と「絶滅危急」2冊もめでたく増刷している。
そんなタイミングに合わせたか、新海均編「季語うんちく事典」(角川ソフィア文庫 720円)が刊行された。いわゆる季語集だが、句会のときに引くというよりは、季語にまつわる好奇心が刺激される、うんちくエッセー。
1頁に1項目が収められているので、どこから読んでもいいのだが、今の季節から読み始めるのが、より楽しめる。秋の季語の「天の川」がギリシャ神話では女神の乳がほとばしってできた乳の川で英語のmilky wayはこれに由来するとか、「相撲」は元来、秋の神事だったために秋の季語などと、まさに季語のうんちくがたっぷりと紹介される。