「子規365日」夏井いつき著
俳句の創始者・正岡子規が34年の短い生涯で残した2万4000句から、実作者でもある著者が独自の視点で選んだ365句を日めくりのように並べ解説した俳句エッセー。
1月1日は「うれしさにはつ夢いふてしまいけり」。この句を詠んだ1893(明治26)年の子規は、定職を得て松山から母妹を呼び寄せ、3人そろって東京で正月を迎えた。著者は、ついつい「いふて」しまった「はつ夢」を笑う3人の明るい声が聞こえてきそうな年明けの一句と評する。
以後、有名でなくとも、子規らしいほのぼのとした佳句や、らしくない異色の句も含め、365日、季節の流れに沿って子規の句を紹介。読み進むごとに、読者の心は子規の伸びやかな精神に共振するはず。
(朝日新聞出版 720円+税)