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「バイアスとは何か」藤田政博著

 偏った思いこみで非合理な選択や行動に走る「認知バイアス」。どこかの国の首相はまさにこれでは!?



 人間がさまざまな対象を認知する際に生じるゆがみ。これが「バイアス」だと冒頭で著者は言う。著者の専門である社会心理学の世界では「バイアス」といえば認知バイアスのこと。しかし専門家の間でも認知の根幹についての見解は「推論」派と「直接知覚」派に分かれているらしい。それでもバイアスは、人間が環境に適応する際に誰にでも大なり小なり働く。

 たとえば自己についての認知のゆがみ。自分を実際より高く評価する「自己高揚バイアス」は精神的にポジティブになれる。また人間を好もしいと思っていれば「パーソン・ポジティビティー・バイアス」が働いて他人と良好な関係を築くのに役立つ。しかしネガティブが悪いと言い切れないのは周囲の環境次第だからだ。

 本書はバイアス研究の巨人といわれるイスラエル出身のカーネマンとトヴァースキーの仕事や数々のバイアスをていねいに紹介。さまざまな実験をもとに、従来の経済学理論では解けなかった人間行動の側面を心理学的に分析する行動経済学の基礎は彼らが築いたのだ。

 文系でもなければ理系でもない、社会科学の世界でバイアスはどう扱われているのか。それがよくわかる高度な入門書。

(筑摩書房 946円)

「認知バイアス」鈴木宏昭著

 およそ40年にわたって認知科学を研究してきた著者。人は誰しも、よく考えればわかるはずの過ちをやるもの。たとえば電車で見かけた美女。彼女は「1モデル」「2女子大生」「3モデルもしている女子大生」のどれか。

 1、3、2の順番で答えたアナタは間違い。「モデルもしている女子大生」が「女子大生」よりも確率的に低いことはあり得ない。その理由は、モデルの数は女子大生に比べ圧倒的に少ないからだ。しかし選択肢がこの順で並んでいると、人はつい間違えるのだという。

 これが「連言錯誤」というバイアスだ。このように著者は多種多様な例を引きながらバイアスとはなにかを説明してくれる。

 豊富な例え話で入門的な知識が身につく。

(講談社 1100円)

「認知バイアス事典」情報文化研究所著

 認知バイアス研究は文系と理系の両方からアプローチの進む分野。本書は哲学や認知科学、心理学などの若手研究者が集ったキーワード解説集だ。

 たとえば「ギャンブラーの誤謬」。ルーレットで黒が4回連続したとする。5回連続で黒になる確率は3・125%。じゃ赤に賭けよう、というのは実はマチガイ。この数字はあくまで「5回連続で黒」の確率でしかない。「次に黒が出る確率」はあくまで2分の1なのだ。

 バイアスとはこのような思いこみから生まれることが多い。とすれば「五輪が始まれば国民は熱狂」「コロナ不手際を忘れる」「支持率アップ」なんていうのは、まさに典型的な認知バイアスの皮算用というわけだ。

(フォレスト出版 1980円)

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