「世界の中心で馬に賭ける」須田鷹雄著
「海外競馬放浪記」との副題通り、訪れた海外競馬場160のうち、著者の記憶に残る63場を紹介する書である。
世界には変わった競馬場があるものだと感心する。たとえば、スイスのサンモリッツ競馬場では湖に張った厚い氷の上に雪を敷きつめその上で競馬をする「氷上競馬」が毎年2月の日曜日に3週連続で行われるという。それ以外の日に競馬は行われないのだ。しかも普通の平地競走とハーネス(二輪車を馬が引く)と、スキージョーリング(スキーを履いた騎手を馬が引く。これは世界でもサンモリッツしか見られない)という3種類の競馬が行われるというから、一度は見てみたいものである。もっとすごいのは、アイルランドのレイタウン競馬場の砂浜競馬。ようするに砂浜にコースを作っちゃうのだが、こちらは年に1日しか開催されない。その日を逃すと1年待たないとレースは見られないから貴重な経験といっていい。
そのほかにも、トルコ競馬は控除率が50%なので、当てても当てても儲からないとか、タイのロイヤルバンコクスポーツクラブ競馬場では、発走時間が過ぎても誰も馬券を買わないのでオッズが表示されない(発走時間が30分くらい遅れることが多いという。それを知っているのでタイの観客もぎりぎりまで馬券を買わない)とか、思わずホントかよ、と言いたくなる。競馬は世界中にあるんだな、ということを実感する本だ。 (中央公論新社 1980円)