「元素のふるさと図鑑」西山孝著
インジウムやガリウム、リチウムなどの金属元素。その名に馴染みはなくてもスマホや気象衛星、電気自動車など、現代の生活になくてはならない精密機器の製造に欠かせないレアメタルと聞けば、多くの人が合点がいくことだろう。いまや国家間の駆け引きにまで使われるこうした金属元素は、地球上のどこで、どのように採取されるのか。
本書は、鉄のように社会基盤となっている「ベースメタル」から、技術文明の発展に貢献する「レアメタル」まで、各金属元素がどのように取り出され、素材や製品に加工されるのか、その過程を教えてくれるサイエンス図鑑。
自然界に安定して存在する元素のうち、約60種類がメタルと呼ばれる金属元素だ。経済活動に有用な金属元素を濃縮した岩石は「鉱石」と呼ばれ地殻に潜んでいる。
ベースメタルの鉄や銅などの鉱石は鉱山で生産されているが、コバルトやテルルなどには鉱山はなく、他の金属を取り出す途中でバイプロダクト(副産物)として回収されるのだという。例えばスマホのディスプレーに使われているインジウムは、亜鉛を精錬するときに分流して回収される。
まずは地球の成り立ちから鉱石がどこでどのようにしてできたか、そして地殻の中の鉱石を探す探査、さらに採掘からものづくりの材料として加工されるまでを解説。
その上で、鉄・アルミニウム・銅・亜鉛・鉛の5つのベースメタルにはじまり、ハイテクを象徴する17元素=レアアースという元素群や、鉛の代替から整腸剤や化粧品まで幅広く利用されている「ビスマス」などの各メタルについて、それぞれの特質や用途を、埋蔵量や生産量価格などの基礎データも添えて紹介。
子どもの夏休みの自由研究の参考書にぴったり。
(化学同人 1980円)