「新版 写真・図解 日本の仏像」薬師寺君子著
いよいよ夏休み。旅先や帰省先で、古刹に足を運ぶ機会もあることだろう。普段は何げなく拝んでいる仏像も、もっと知識があれば、よりありがたみも増し、ウンチクを披露すれば、子どもにも自慢できるのでは。そんなささやかな願望をかなえてくれるお薦め本。
仏教は紀元前5世紀ころ、釈迦が悟りを得て開いた。釈迦は自らの存在を信仰の対象とするようには説かなかったゆえに、仏像は遅れること紀元1世紀末のガンダーラ(パキスタン)ではじまった。以後、仏教の発展とともに東アジア全域でそれぞれの地域の特色が加味された仏像が制作されるようになったという。
日本に伝えられたのは古墳時代の6世紀。当時の欽明天皇が、初めて見た仏像を「きらきらと輝いている」と表現しているところから、それはメッキが施された青銅製の金銅仏だったと思われる。
その後、飛鳥時代になると日本でも仏像が盛んに作られるようになった。そんな仏教や仏像の歴史や宗派と本尊の関係などを概観した上で、大きく「如来」「菩薩」「明王」「天部」の4グループに分類される仏像のそれぞれについて詳しく解説する。
仏像の最上位に位置する如来の基本は釈迦をモデルにした「釈迦如来」。他にも、臨終の際に極楽浄土から迎えに来る「阿弥陀如来」や、病気や苦しみなどを癒やしてくれる「薬師如来」、密教における最高の仏で宇宙の中心とされる「大日如来」など数多くの如来がある。
国宝の室生寺(奈良県)の「釈迦如来立像」や浄瑠璃寺(京都府)の「阿弥陀如来坐像」など、さまざまな仏像を写真で紹介しながら、その特徴や印相(手の形)などひとつひとつの表現の意味などを教えてくれる。
知れば知るほど、さらに知りたくなる仏像の格好の入門書だ。
(西東社 1650円)