「商店街さんぽ」あさみん著
著者は8年前、友人に連れられ北九州の旦過市場を訪ね、戦後すぐにつくられたまち並みの光景に興奮と感動を覚えた。以来、全国の歴史ある商店街を300カ所以上も歩いてきたという。
その原動力は、「知らないまちを歩くという冒険と、早く行かないとなくなるかもしれないという焦燥感」、そして「実際に行かないとわからない現地の感動」だ。
本書は、心に残ったお勧めの商店街とその周囲の魅力的なスポットを紹介するガイドブック。
トップに登場するのは老朽化や維持費の問題で加速度的に姿を消しているアーケード商店街。
そのひとつ、愛媛県今治市の今治商店街とそれに続く新町商店街には朝5時から営業する早朝喫茶がある。商店街の終点に港があり、漁師や定期便利用客のために早朝から営業をしているそうだ。
また商店街の裏手には、今治城の外堀の名残である金星川が流れ、その川をまたぐように私設の小さな橋がいくつも架かり、独特な景観をつくり出している。
また100年以上も前にオープンした浴場と映画館、ダンスホールを備え、まちの娯楽拠点としてにぎわった「今治ラヂウム温泉」の建物など、まちの見どころも紹介。
ほかにも、愛知県瀬戸市の深川神社参道の、地上にあるのに「宮前地下街」や、長崎県佐世保市の約1キロに及ぶアーケード商店街のすぐそばにある戦時中の防空壕をそのまま使用している「とんねる横丁」、沖縄の米軍嘉手納基地に隣接し、まるで海外のまちを歩いているかのような「中央パークアベニュー」など。
一度は訪ねてみたい、とっておきの50商店街を網羅。全国的にシャッター通りが増える中、住民たちの暮らしの営みが垣間見える商店街の風景に元気をもらう。
(学芸出版社 2420円)