「60秒右脳ドローイングで絵が感動的にうまくなる!」松原美那子著
芸術の秋は、たびたび美術館に出かけて絵画鑑賞を楽しんでいる。絵を見るのは好きだ。しかし描くのは子どもの頃からめっぽう苦手である。とはいえ、今さら絵がうまくなるはずもないので、諦めて見る専門に徹するしかない。
と思っていたところ、誰でも絵がうまくなる方法を伝授するという本書を見つけた。デッサンスクールを主宰する著者は、1万人以上の生徒の絵心を向上させてきたという。自分の絵の下手さは自覚しているので、半信半疑ながら練習を開始してみた。
紙と鉛筆、消しゴムを用意し、まず「アタリ」を知る。これは“下描きの下描き”のようなもので、世の中のたいていのモノは〇△□に置き換えられるという。〇△□の描き方を練習したら、次に行うのは「右脳ドローイング」だ。これは、短い時間で絵を描くことで強制的に右脳を働かせる練習法。右脳は視覚的で空間的な処理を専門とする。絵を描く際にはまず右脳で正確に形を捉えることが重要で、その前に左脳で陰影や構図などをゴチャゴチャ考えると、結果として上手な絵が描けなくなるそうだ。
1日数カット描くのがいいというので、リンゴ、眼鏡、ウイスキーのボトルなど、家にあるものを片っ端から描いてみた。60秒という短い時間なので、大まかなシルエットに沿って形をとるのに精いっぱいだが、右脳はビシビシ働いていそうだ。何しろ、最初はただ丸いリンゴすらいびつなジャガイモのようにしか描けなかったが、続けていると数日できれいな形がとれるようになり、自分でも驚いた。
左脳も働かせながら、陰影や光沢、透明感を練習する方法も紹介されている。今年は“描く”芸術の秋を楽しめそうだ。 <浩>
(西東社 1870円)