「鬼と日本人の歴史」小山聡子著

公開日: 更新日:

「鬼と日本人の歴史」小山聡子著

 古代から現代まで続く鬼と日本人の関係の変遷をたどり、鬼とは何かを考察した通史。

 中国では鬼は死者の霊とされており、7世紀には中国からそうした思想が日本に入ってきた。一方で、日本の鬼観念は、餓鬼や夜叉、羅刹など仏教の鬼にも影響を受けている。憤怒の相や裸にフンドシ、赤や青の肌、手に持つ宝棒などの鬼の特徴はもとをたどると仏教の鬼の姿なのだそうだ。

 また、海からの漂着者を鬼と見なしたり、形態異常で生まれた赤子を鬼子と呼んだり、嫉妬に苦しむ女性を鬼として表現したりしてきた。

 近世でもそうした風潮は変わらず、戦時下で桃太郎がプロパガンダに用いられるなど、鬼が侵略や差別、迫害の正当化に用いられてきた事実にも注目。

 鬼を手掛かりに日本人の精神世界にも迫る力作。 (筑摩書房 902円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因