「水木しげるロード全妖怪図鑑」境港観光協会協力水木プロダクション監修
あの妖怪マンガの巨匠の生まれ故郷として知られる鳥取県の境港市。街のメインストリートは「水木しげるロード」と名付けられ、マンガに登場する妖怪ブロンズ像が観光客を楽しませてくれる。
1993年のオープン当時、「鬼太郎」や「ねずみ男」など23体だった同ロードの妖怪ブロンズ像は、現在では800メートルの間に177体に増殖。
さらに、25周年を機に、夜間も楽しめるよう全てのブロンズ像がライトアップされるなどの大規模なリニューアルが施され、ますますその魅力を高めている。
本書は、その水木しげるロードに設置された177体と、鬼太郎フェリーによって境港とつながる隠岐の11体、さらに駅や空港に設置されたものも含め全194体の妖怪ブロンズ像を解説するカラー新書図鑑。
JR境港駅(鬼太郎駅)に降り立った観光客を出迎えてくれるのはロードの出発点にある「水木しげる先生 執筆中」のブロンズ像。まるで原稿を催促するかのような鬼太郎やねずみ男、目玉おやじに囲まれ執筆に励む巨匠の姿が再現されている。
駅前広場には、鬼太郎と目玉おやじをはじめ、アメリカの「バックベアード」や中国の「女夜叉」など世界の妖怪6体が集まり会議を開催中(世界妖怪会議)。
その傍らでは、マンガ「河童の三平」に登場する人気キャラクター「死神」が大好物のスイカをぱくついている。
水木マンガの2次元の世界から3次元に飛び出したキャラクターたちは、原作のテイストを少しも失うことなく、リアルに再現されている。
巨匠が亡くなって7年経つが、自らも妖怪の仲間入りをして、この境港の街の中で生きているような錯覚に陥る。
境港を訪ねる際には本書を忘れずに。
(文藝春秋 1430円)