「海のへんな生きもの事典 ありえないほねなし」ひとでちゃん著、ワタナベケンイチ・イラスト
「海のへんな生きもの事典 ありえないほねなし」ひとでちゃん著、ワタナベケンイチ・イラスト
人間は自分がそうだからといって、動物には背骨(脊椎)があるものだと思い込んでいるフシがある。しかし、実はこの地球上では、むしろ背骨があるほうが少数派なのだそうだ。
分類学では動物を基本的な体のつくりで約34のグループ(門)に分けている。背骨を持つことが特徴の脊椎動物門は、その34の門のなかのひとつでしかない。残りの33動物門はすべて背骨を持たない無脊椎動物なのだそうだ。
そんな無脊椎動物を親しみを込め「ほねなし」と呼び、ほとんどすべての動物門が生息する海のほねなしたちをイラストや写真で紹介しながら解説してくれる面白ビジュアルブック。
まずはありえない「姿形」のほねなしたちをピックアップ。
陸のクモと同じ節足動物の仲間のウミグモ。その特徴は何といっても体の細さ。胴体が8本の長い脚とほとんど同じ細さで、リアル「棒人間」のような姿をしている。
その細さゆえに内臓が胴体に収まりきらず、なんと内臓が脚の中にもあるという。だから卵も脚から産むそうだ。
世界最大の生き物も実はほねなしだという。刺胞動物門のクラゲの仲間で、個虫(ポリプ)がつながって管のようになることから管クラゲ類と呼ばれるクラゲの一種、マヨイアイオイクラゲは、全長40メートルを超えることもある世界最長の動物。無人潜水艇によって推定120メートルの管クラゲの仲間も撮影されてもいる。
ほかにも、宿主であるメスのカニを去勢して、その卵を抱える部分に寄生する繁殖に特化したフクロムシ(節足動物門)や、危険を感じたら自らの内臓を捨ててしまうナマコ(棘皮動物門)など、知られざるほねなしたちの不思議な世界を案内。
好奇心が強く刺激されるお薦め本。
(山と溪谷社 1760円)