「かわいいアジアの洋館」タチアナ・キルディシェワ著 西山志緒訳
「かわいいアジアの洋館」タチアナ・キルディシェワ著 西山志緒訳
ショップハウスなど、シンガポールの街路を彩る可愛らしい建物の魅力を紹介するビジュアルガイド。
ショップハウスとは、1階が仕立屋や床屋、喫茶店などの店舗、上階がそのお店の経営者の住居となっている東南アジアの伝統的な建物のこと。
シンガポールのそれは、世界各地から移住者たちが持ち込んだ文化がマレーや中国の文化と融合して生まれたプラナカン様式と呼ばれるフォトジェニックな建物なのだ。
ページを開いて、まず目に飛び込んでくるのは建物の色だ。外壁は黄色やオレンジ、空色などの鮮やかなパステルカラー、窓枠や装飾も別色のパステルカラーで彩られ、何ともカラフル。見ているだけで心が浮き立つような明るさを放っている。
まずは「イースト・コースト・ロード」の建物を見て歩く。
プラナカン雑貨店「ルマー・ビビ」が建てられたのは1928年。
水色とピンクを基調とした建物正面は、西洋建築を模倣しながらも、細部の装飾には中国で「富と繁栄、長寿」などのシンボルと考えられている花などのモチーフがふんだんに用いられている。
店の裏に回ると、オーナー自身の手による見事な壁画アートが目に飛び込んでくる。華やかな刺しゅうを施した民族衣装のケバヤを着飾った女性たちが多数描かれており、彼女たちが持つ食器などは本物を壁にそのまま貼り付けるなど、独創的だ。
同じイースト・コースト・ロードには、ショップハウスとは見た目が明らかに違う玄関へと続く階段が特徴的な住居用テラスが残るエリアもある。
ほかにもジョー・チアットやゲイランなどを中心にイースト・コースト地域の個性的な建物を紹介。
異国情緒たっぷりの建物を見ていたら、かの国に断然行ってみたくなる。
(エクスナレッジ 1980円)