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「政策図解」近藤哲朗、沖山誠著 鈴木寛監修

「本格的な政策論争を!」などと空っぽの掛け声ばかり勇ましい政界。せめて国民は政策の是非を質し、政治を正す必要がありそうだ。



「政策図解」近藤哲朗、沖山誠著 鈴木寛監修

 ひとくちに政策といっても素人には未知の森。役人など一般の常識では不可解な文言をひねりだす仕事をしているのではないかと思うほどだ。しかし、政策は政治が行うビジネスプラン。そう考えれば難しくないはず。むしろわかりやすく図解できるのではないか。

 本書はそんな発想から生まれたとおぼしい“図解で知る政策”。最初に政策とはなにかの簡略な説明があり、本体は2部構成。前半の「経済を支える」では人材育成、事業創出、労働環境など目的別に政策を切り分け、それぞれの発想を説明。後半の「社会を支える」では教育、地域、健康・医療、自然環境などに小分けし、それぞれを具体的に説明する。

 たとえば、「教育を支える」では政府が基金(ファンド)を設立し、資金運用を専門機関に委託して得た利益を大学の研究資金に充てるしくみが図解される。また近頃の日本政府の政策はやたらと「ポイント」を振りかざして国民の気を引こうとする傾向にあるが、本書でも家電エコポイント制度をわかりやすく説明したあとで「需要が先食いされて景気対策につながっていないのではないか」との批判も紹介される。

 次回作はぜひ、さらに一歩二歩ふみこんだ批判的図解にも期待したい。

(日経BP 2640円)

「再生可能エネルギー技術政策論」安田陽著

「再生可能エネルギー技術政策論」安田陽著

 東日本大震災での原発事故以来、日本では再生可能エネルギーが初めて本気で注目された。だが、年月も経って一般の関心もいつしか薄れ、日々の物価上昇に悩む中、改めて再生可能エネルギーの技術と政策について解説したのが本書だ。

 著者は京大特任教授の専門家(執筆当時)。「日本特有の問題点の整理と課題」という副題は硬派な響きだが、こども向け絵本でエネルギー問題をとりあげてもいるだけに専門バカではない。

 たとえば、「再エネは不安定なのでバックアップ電源が必要」というちまたの懸念は「神話」とバッサリ。「グッドな地産地消とバッドな地産地消」など素人にもアピールする姿勢は得難いものだろう。

(インプレス NextPublishing 2640円)

「日本の経済政策」小林慶一郎著

「日本の経済政策」小林慶一郎著

 バブル崩壊から立ち直れない日本。最近のインフレも庶民にとっては日本経済が再生した実感もなく、円安が急進行し、生活が苦しくなったとしか思えない。期待された日銀新総裁体制もまだまだ先行き不透明だ。

 本書は副題で「『失われた30年』をいかに克服するか」と問いかける。「失われた」理由は1990年代の財政政策と構造改革が不発に終わったから。毎年のように数兆円の補正予算を組んでも、不良債権を解決しないままでは不発。小泉劇場での構造改革も騒がしいだけで改革の歩みはのろかった。結局、政府が行う不況対策はすべて不発。それゆえ中央銀行頼みの金融政策一本やりでいくしかなくなったのだ。

 著者はこうした経緯を淡々と説明し、終盤では経済格差と長期停滞を打破することを唱えた理論を紹介してゆく。全体として経済学専攻の学生の教科書のような筆致ながら、長期停滞を脱却する道は遠いことを理論的に説明。独立した財政機関や超党派での社会保障改革組織の設置などを最後に提唱している。

(中央公論新社 1012円)

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