自民党の末路
「検証政治とカネ」上脇博之著
ダメダメとはわかっていたが、裏金問題で一気に国民の信を失った自民党。ここまで低劣化したニッポン政治の元凶は?
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「検証政治とカネ」上脇博之著
「政治はカネがかかるんです」と開き直ったどこかの国の元首相がいたが、市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーとして20年以上「政治とカネ」を追及してきた著者は、現行の法律と制度が民主主義に反して政治資金の不正な調達を許していると厳しく指摘する。
1990年代、リクルート疑獄などを背景に政治改革が行われたが、当時の野党自民党の抵抗で政党への企業献金が温存され、政治資金パーティーによる抜け穴が開いてしまう。本書は過去の経緯と現状を詳しく解き明かす。
実は、著者は憲法学の大学教授。しかし象牙の塔にこもらず、市民運動家としての長年の実績もある。本書の真価は活動に裏付けられた説得力にある。現役代議士のための資金パーティーのチケット購入依頼状の実物写真などはその一例だろう。
また、著者は国会議員を刑事告発する活動もしてきたが、告発状を書くのはきわめて難しく、憲法学者の著者ですら専門家の手を借りないと厳しい。さらに刑事告発は検察が受理しなければ起訴できないが、検察は概して消極的。特に安倍政権時代は内閣と検察の癒着が疑われることが多かったという。メディア報道だけで自民党に悪態をつくたぐいの批判と違い、具体的な行動を通して地道な権力の監視を続ける市民運動家ならではの説得力が光る。 (岩波書店 990円)
「自民党の大罪」適菜収著
「自民党の大罪」適菜収著
序文でいきなり「自民党の大罪を白日のもとに晒す」とぶちあげる本書。こちらの著者も団塊ジュニア世代の保守系評論家だが、「かつての自民党と現在の自民党はまったく別物」という。
「謙虚さ、品性、成熟の対極にあるものが、今の自民党である」と怒りをあらわにして「自民党にはすでに保守的要素はない。現在の自民党は新自由主義勢力、財界、政商、カルト、反日勢力の複合体となっている」という。著者の主張はこれらのことばに凝縮されている。
金融財政から国防までアメリカの言いなりになるような勢力を「保守」とは呼ばない。拝金主義を蔓延(まんえん)させ、国民に自覚をうながさず、外国人がほしいままに不動産を買いあさるのを許す。こんなものは「保守政治」ではないのだと語気鋭い。
安倍晋三は「究極の国賊・売国奴」、岸田文雄は「ヘタレ界の第一人者」、小泉進次郎は「下半身から先に生まれた男」、杉田水脈は「安倍晋三が残した差別主義者」等々、痛快にブッタ斬る。 (祥伝社 1012円)
「自民党はなぜここまで壊れたのか」倉山満著
「自民党はなぜここまで壊れたのか」倉山満著
このところの自民党批判はしばしば保守派から出ている。本書もその一つ。団塊ジュニア世代の保守系評論家による自民批判だ。冒頭から「あらゆる腐敗と無能に耐えねばならない自民党の“ソコソコの政治”」と容赦ない。
それでも自民党支配が続くのは「与党にどんなに不満でも、野党第1党はもっと酷い」と誰もが知っているから。おかげで「どんなに腐敗しようとも自民党を第1党に選び続けるしかない。選択肢が1つしかないと腐敗は無限大になる」と威勢がいいが、ではどうするか。著者は、欧州並みの「マトモな近代政党を2つ作れ」という。雑談調であちこち飛ぶのでわかりづらいが、要は健全な政権交代が起こるような政治環境にすべきだということらしい。とすればマトモな話だが、具体的な処方箋に欠けるのも事実。なお著者の肩書は「一般社団法人救国シンクタンク理事長兼所長」。 (PHP研究所 1100円)