「ビジュアルで学ぶ麻を知る図鑑」セルジュ・シャールほか著、高安淳一監修、神奈川夏子訳
「ビジュアルで学ぶ麻を知る図鑑」セルジュ・シャールほか著、高安淳一監修、神奈川夏子訳
昨年の法律改正で、日本でも大麻の医薬品利用が解禁されるようだ。しかし、今でも多くの人にとって「大麻」は、ドラッグ(違法薬物)と同意語だろう。一方で「麻」は、衣服の素材を連想し、悪いイメージを持つ人は少ないはずだ。
ところが実はどちらも同じもので、古来、日本人にとって大麻は、衣食住を支える生活にとって欠かせないもので、身近な農作物だったという。
本書は、長年、不当なイメージにつきまとわれていた大麻のさまざまな面にスポットライトを当て解説したフランス発のビジュアル・テキスト。
人類と大麻の関係を示す最古の形跡は、紀元前8000年の新石器時代の遺跡から見つかっており、大麻と人類の歴史は1万年以上に及ぶ。大麻を内服薬や麻酔薬として外科手術に用いたのは中国人で、紀元前2700~600年の文献に記されているという。
そんな歴史に始まり、ほとんどの気候に適応し、水も肥料も殺虫剤もあまり使わずに育てられるそうで、その栽培方法(日本では大麻の栽培は違法だが)なども詳述。
そして多くの人が気になるであろう、ハシシュ(マリフアナ)の効果、そして服用するとどうなるのかもちゃんと解説。
また、繊維としての大麻は、衣服だけでなく、耐熱性や耐火性に優れていたことから船の綱具類や帆などになくてはならない存在だったという。
音楽や宗教、文学にも多大な影響を与えてきた大麻は、一方でずばぬけた栄養素も持っている。その料理法はもちろん、建築資材やバイオプラスチックの原料としての可能性、医療用大麻の現在まで、多くの史料や図像を添えて紹介してくれる。
偏見をなくし、可能性を秘めた大麻の多様な世界について学ぶ。 (グラフィック社 3520円)