「世界のサメ」ダニエルC.アベル、R.ディーン・グラブス著 佐藤圭一監修 西尾香苗訳
「世界のサメ」ダニエルC.アベル、R.ディーン・グラブス著 佐藤圭一監修 西尾香苗訳
映画「ジョーズ」の印象が強すぎたのか、サメと聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、海の覇者として君臨する捕食者としての姿だろう。もしくは高級食材のフカヒレか。しかし、それらはサメという生き物のほんの一面でしかない。
世界には約550種ものサメがいて、地球のほとんどの海域に生息。半数を超える種が、深海を主な分布域としており、ジョーズ(ホホジロザメ)のようなサメは例外で、全長1メートルに満たない小型種が多いという。
本書は、そんな知られざるサメについての豪華ビジュアル入門書。
ホホジロザメにしても、実はその交尾や出産を目撃した研究者はおらず、新生仔や幼魚がどこで成育するのかも分かっていないそうだ。
一方で、その身体能力の秘密は、水温よりも14.3度も高く保っている体温にあるそうだ。体温が高ければ筋力が増し、感覚の鋭さも保てる。その肝臓が狙われ、シャチに襲われることもあるという。
ほかにも、全長18メートルにもなる世界最大の魚ジンベエザメなどのおなじみのサメから、性成熟に達するまで約150年かかるという超長寿のニシオンデンザメなどの定番のサメを紹介。また、捕食者に襲われ食べられそうになると大量の海水を飲み込んで普段の倍のサイズに膨れ上がるアメリカナヌカザメ、小型ながら自分よりも大きな獲物が近くに来ると突進して鋭い歯と分厚い唇で横っ腹に食いつき、体を回転させて肉をえぐり取るダルマザメなどの生態には好奇心を刺激される。合計で約40種のサメの生態や行動の秘密、進化の過程など解説する。
もしもサメがいなくなった地球の海はどうなってしまうのかにまで思いを巡らせながら、その保護についても考える。
ジョーズ以来止まっているサメの知識をアップデートする格好の書。 (グラフィック社 3960円)