上川隆也主演「沈まぬ太陽」は大人が見るべき力作だ
WOWOWの「沈まぬ太陽」が後半の第2部に突入した。作家・山崎豊子の代表作のひとつであり、7年前に渡辺謙主演で映画化もされている。WOWOW版の最大の特色は連続ドラマだということだ。しかも全20話であるため、長い年月の物語が丁寧に描かれていく。
始まりは昭和36年。国民航空に勤務する恩地(上川隆也)は、労働組合の前委員長(板尾創路)の独断で、新たな委員長にされてしまう。生真面目で正義感の強い恩地は安全運航を最優先して、経営陣に正面からぶつかっていく。その結果が約10年もの海外勤務、つまり不当な報復人事だ。
大河ドラマ「軍師官兵衛」も手がけた脚本の前川洋一は、恩地を裏切ることで出世していく行天(渡部篤郎)や、恩地を追い込む経営幹部・堂本(國村隼)など、敵役をしっかり造形することで主人公を際立たせている。
また主演の上川は、かつて同じ山崎豊子原作の「大地の子」(NHK)で注目された役者だ。「そんなに筋ばかり通していたら大変だぞ」と見る側が心配になる恩地を熱演。タンザニアやドバイでのロケ映像もスケール感と臨場感を生んでいる。
ドラマの後半は、御巣鷹山の墜落事故を思わせる悲劇からスタートだ。ようやく帰国した恩地が、今度は遺族係として辛酸をなめる。「命を預かる会社」の内幕も含め、大人が見るべき力作だ。