反トランプで中国と利害が一致「アクアマン」の仰天戦略
今でこそ、コロナ禍で米国の映画館の多くがクローズしたため、やむなく唯一復活している中国での興行を優先するケースが増えてきているが、「アクアマン」公開時はもちろん新型コロナ感染症などはなく、北米は世界最大の市場として君臨していた。そうした時代において、中国に先頭車両として牽引してもらうこうした興行戦術は、米メジャーの一角ワーナーとしても初めての試みだったという。
当時はトランプ時代で米中関係は悪化の一途。そんな中、本作は善悪の対決でなく、かつて友人だった人々が“分断”され、争う話を描いた。主人公アクアマンは悪を倒すのでなく、逆に敵に対して自らの行為をやりすぎだったと謝罪するなど、無敵のスーパーヒーローとは思えぬ姿を見せる。そして2つの対立種族は両者の懸け橋となる混血の子=アクアマンの活躍によって和解を目指すのだ。
「分断から和解へ」というアンチトランプ的なメッセージを、移民社会であるハリウッドはこうして発信し続けてきたのだが、くしくもそれは貿易戦争で劣勢の中国にとっても歓迎すべきものだった。この映画も、中身に中国推しの要素は皆無だが、結果として中国人観客が絶賛。世界で真っ先に支持し、お化けヒットを巻き起こし、本国アメリカの興行さえも主導した。