ウォルトディズニーになろうとしたワンダ会長王健林の野望
いわゆるチャイナマネーがやらかしたアメリカ映画に「レッド・ドーン」(2012年)がある。作り手が忖度して敵を中国軍から北朝鮮軍へ変更した結果、全体が矛盾だらけになってしまった悲運の作品だ。
その逆に、大資本の力業で面白くなった映画もある。「グレートウォール」(16年=中・米)がそれだ。中国ワンダ・グループ(大連万達集団)が買収した米映画会社レジェンダリー・ピクチャーズによる超大作で、小品「レッド・ドーン」と違い、最初から全世界公開を前提に作られた。もっとも興行的には大コケの部類に入るのだが、中身はイケてるし、何よりそのくらい過剰にカネをかけたバブル作品ということだ。
このころの大連万達は、個人総資産300億ドルを誇るカリスマ=王健林会長の指揮下で、米国の映画会社やテレビ番組制作会社、シネコンチェーンなどを次々と買収していた。彼はエンタメの覇者、いわば本気でウォルト・ディズニーになろうとしていたのだ。
かつて日本もバブル時代、ハリウッドの映画産業を買収していた時代があったが(ちなみにユニバーサルの買収を松下電器産業と争ったのがあのトランプ氏だ)、大連万達ほどクリエーティブに関わったという話は聞かない。