かつての海賊版天国は爆買い天国となり、今や「作る国」に
春節真っただ中の中国映画市場は、コロナ禍で壊滅状態の世界各国を尻目に、すでに累積興収30億元(約500億円)にも達し、記録更新が予測されているという。春節(旧正月)では、その年最大の話題作や大作が公開されるが、ここ数年の流れを一言でいうなら「圧倒的国産映画優位」がキーワードだ。
そもそも中国市場ではハリウッド映画でさえ、もはや見る影もない。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)の興収が約4億9500万元と振るわなかったのが象徴的で、転機となったコロナ前の2019年は、年間たった3本しか興収トップ10にランクインできなかった。現在では最重要な春節シーズンの公開作品は、ほぼ国産映画が占めている。
だが政策的に外国映画の参入を抑えているかの国では、シェア率だけ見ても公平な分析はできない。むしろ、それ以上にこの年の春節映画で重要だったのは、「国産SF元年」と報じられるほど、上位作品に派手なエンタメ作品が並んだ点だ。
たとえば興収トップの「流転の地球」は、終末の危機を避けるため、地球ごと宇宙を移動するという、スケール感あるSF大作。本来この手の作品はアメリカ映画の独壇場だが、中国映画界は初めての挑戦で、王者ハリウッドに匹敵するブロックバスター映画を作り上げてしまった。