反トランプで中国と利害が一致「アクアマン」の仰天戦略
一昔前まで中国とハリウッドの関係といえば、豊富な資金にモノを言わせる傲慢さが話題の中心だった。この連載でも書いたが米国の映画会社を中国企業が買収したとか、中国系キャストの活躍を無理やり追加した別バージョンを作らせる(「アイアンマン3」=2013年)など、やりたい放題な印象であった。
だが21年現在、そんな話はついぞ聞かない。中国にこびる描写やキャラなんてのは過去の話。今やチャイナマネーは目立たぬ裏方に回り、間接的な影響力を駆使して巧妙にハリウッドの発信力を利用している。節目となったのはコロナ禍前の19年の大ヒット作「アクアマン」だ。
本作は海を支配するヒーロー、アクアマンの活躍を描く海洋アクション。日本ではさほど知名度のないアメコミヒーローだが、これが全世界的に大ブレークした。世界興収は11億ドルを突破、これは世界歴代トップ20(最高位。現在は23位)の大記録だ。
注目すべきは、世界で一番早く公開されたのが北米ではなく中国市場で、アメリカ本国は2週遅れの公開スケジュールだった点だ。結果、米国公開までの数日間で、中国を中心に2億6000万ドルを荒稼ぎ。ケタ違いの好調ニュースが米国に逆輸入されたことで原作ファンの期待が最高潮に達し、本国でも強烈なスタートダッシュを切ることに成功した。以来、アジアを含む外国での興行に強い本作は、アメリカ市場の2・5倍ものカネを、海外市場から稼ぎ集めた。