なぜ今、ジュリーと水谷豊の本が話題なのか?「過去形の人生」を生きる読者の共感
「ジュリーがいた」(島崎今日子著、文芸春秋刊)と「水谷豊自伝」(水谷豊・松田美智子著、新潮社刊)が話題である。
沢田研二は75歳。水谷豊は71歳。私はテレビに向かって「ジュリー」と叫んだこともないし、「相棒」もほとんど見たことはない。だが、この2冊の本は読んでみたいと思った。
2人には共通点が多い。子供の頃はともに野球少年。沢田は当時の子供たちと同じように、長嶋茂雄に憧れ、立教大学に入りプロ野球選手になるのが夢だった。
水谷の初主演映画は長谷川和彦監督の「青春の殺人者」(1976年公開)。長谷川監督の第2作は沢田主演の「太陽を盗んだ男」(79年公開)。水谷はキネマ旬報主演男優賞を、沢田は日本アカデミー賞主演男優賞を受賞している。
共通の友人にショーケンこと萩原健一がいた。水谷は「太陽にほえろ」(72年開始)でマカロニ刑事役のショーケンに追われる犯人役がきっかけで知己を得た。家に呼ばれ、一緒に風呂に入っていろいろ話をしたという。
沢田と萩原の付き合いはGS時代から、萩原が死ぬまで続いた。ザ・テンプターズ時代の萩原を見て、沢田はこう言ったという。
「ウエスタン・カーニバルなんかのとき、あの爆発するようなエネルギーとふき上げるステージには、ぞっとするような威圧を感じて、もう、ぼくがファンの一人になってしまった、と感じたほどです。こいつには絶対負けたくないと思いましたよ」(ジュリーがいた)
「ライバルは沢田研二」と自著に書いた萩原は、何度も結婚を繰り返し、何度も逮捕され、監督や共演者と喧嘩したが、2019年春、静かに逝った。沢田はライブステージで涙を飛ばしながら、「俺はあいつが大好きなんだ!」と叫んだ。