薬物依存は刑罰では治らない 専門医語る「唯一の手段」は
元プロ野球選手・清原和博被告の判決が言い渡された。しかし、彼にとっていま最も必要とされるのは、刑罰以上に薬物依存への適切な治療だ。
日本では、薬物依存を治療対象として見ていない――。こう指摘するのは、薬物依存治療の第一人者である国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部部長の松本俊彦医師だ。
覚醒剤などの薬物は、使用するにつれ脳が変成され、強い欲求をコントロールできない薬物依存に陥る。薬物依存は、刑罰や入院で薬物から切り離しても、どれだけ薬物の害を説いても、薬物使用を責めても、「治る」ものではない。
慢性疾患である2型糖尿病に置き換えるとわかりやすい。入院時は高カロリー・高脂肪食と強制的に手を切れる。しかし退院後は、知恵を絞って高カロリー・高脂肪食を手に取らないようにしなくてはならない。
まわりが「高カロリー・高脂肪食を食べたあなたが悪い」と責めればかえって逆効果で、患者は高カロリー食を食べてしまっても医師や周囲に隠し、あるいは治療をドロップアウトし、病状は進行する。薬物依存も同様だ。