薬物依存は刑罰では治らない 専門医語る「唯一の手段」は
スマープの導入で、国立精神・神経医療研究センターでは、初診後3カ月時点での治療継続率は9割以上に上る。スマープ不参加の患者群では6割以下。松本医師の前勤務先の病院では3割程度だったので、飛躍的に伸びた。
全国の精神保健福祉センターでスマープの導入が決定されており、現在24カ所で実施。加えて21カ所の医療機関でもスマープが導入されている。少しずつ薬物依存の治療のサポート体制が広がりつつあるが、しかし欧米に比べるとまだまだ足りないという。
「日本では薬物依存は『治療』より『刑罰』が先にくる傾向がある。治療専門の医療機関や専門医は不足しており、薬物依存患者の受け皿は少ない」
清原被告に対して、裁判官は「自助努力による更生がふさわしく……」と述べた。しかし、適切な治療と、今後起こるかもしれない「大失敗」も受け入れる治療継続のためのサポート体制は用意されているのか。
松本医師によれば、「今度もしやったら……」は、薬物依存の患者に対して医師も周囲も最も口にしてはいけない言葉だという。患者が治療を中断してしまっても、家族や周囲が「依存症者家族のための相談」につながり続けることで、患者が治療を再開するケースは少なくない。親友の佐々木主浩氏をはじめ、清原の周囲の人々が理解していればいいのだが。