<5>年寄りにがんが多いのはなぜか?(2)

公開日: 更新日:

がん組織には、がん細胞とがん組織の間にあってがん細胞を支援する“がん微小環境”というものが存在することがわかっています。これは線維芽細胞、炎症細胞、免疫細胞、血管、リンパ管から構成され、がん細胞が生きていくうえでは欠かせません。細胞老化した細胞が重なりあった箇所ががん微小環境になっている可能性があるのです」(一石教授)

 実は肥満にがんが多いのはこのがん微小環境システムが関係しているのだという。

「高脂肪食を食べさせたマウスは各所で、細胞周期を停止させる働きがあるP16やP21遺伝子の発現が強まっていることが確認されています。肥満になると細胞周期がストップした細胞老化の細胞が増えてSASP作用を起こし、がん微小環境をつくっていると考えられるのです」(一石教授)

 実際、肥満によって増加した腸内細菌の代謝産物であるデオキシコール酸が腸肝循環によって肝臓に達し、肝星細胞が細胞老化・SASPを起こして肝がんを促進させるがん微小環境がつくられることがわかってきたという。

 これは診療現場においても、高度脂肪肝では胆汁鬱滞の指標であるALPやγ―GTPが高値になりやすく、このような脂肪肝は肝硬変から肝臓がんになりやすいことが既に分かっている。最近肥満や脂肪肝からの肝臓がんが増えている機序がこれで説明できるだろうと考えられるという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘