チェスは認知症の発症率を7割下げる 脳が若返るゲームとは
寿命をまっとうしてコロッと亡くなるのは、理想だろう。しかし、軽度認知障害(MCI)を含めると、認知症の人は6年後に1000万人を突破するという。高齢社会の今、認知症は決して他人事ではない問題だが、どうせなら認知症にならずに過ごしたい。神経内科が専門で、「米山医院」院長の米山公啓氏が言う。
「認知症のひとつ、アルツハイマー病は、アミロイドβが脳に蓄積するのが主な原因といわれています。しかし、アミロイドβが蓄積されていても、アルツハイマー病を発症しなかったという報告があるし、初期の認知症が回復したという症例もあります。そういう人たちは、発症した人と何が違うか。大きな視点で考えると、人生の役割や目的でしょうが、毎日の生活でいうと、手先を使うゲームが役立っている可能性が高い。そういうゲームを行うことで、脳の神経細胞が結びつき、アミロイドβで障害された部分を補完するネットワークができますから」
先日、妻の樹木希林さんの後を追うように息を引き取ったミュージシャンの内田裕也さんは、妻の訃報に触れて「人を助け、人のために祈り、人に尽くしてきたので、天国に召されると思う」とコメントした。その内田について歌舞伎役者の中村獅童は「プロデュース力がすごい」と別れを惜しんだ。2人とも生前は人に尽くす生活だったことがうかがえる。それが人生の役割だろうが、ゲームはもっと簡単で効果的だという。ちなみに希林さんの趣味は和裁と車の運転だった。
クロスワードパズルをすると、認知症の発症率が4割下がるとされる。チェスの認知症抑制効果はさらに上回り、74%だったという。
「相手の手を推理して、先を読むゲームです。脳の情報に検索をかけることで、特に前頭葉が鍛えられます。前頭葉は加齢によって機能が低下する。そうすると、怒りを抑える力が弱まって、感情が制御できなくなります。つまり、キレやすい。麻雀や将棋などのゲームによって、前頭葉の機能低下が抑えられると、気持ちが穏やかなまま生活できる利点もあるのです」
なるほど、麻雀が強い人は、自分の手牌が悪くても、相手に振り込まないように打ち回しがうまい。そうやって自分に流れが来るのをじっと我慢し、「ここぞ」というときにリーチをかけて勝負に出る。将棋もそうだろう。形勢が悪いからといって、飛車や角でガンガン突っ込んでは、相手の思うツボだ。対戦型のゲームに卓越している人は前頭葉の働きが抜群で、感情の抑制が利く。
「人生の役割というと大げさでしょうが、麻雀で卓を囲むには、自分のほかに仲間を3人集めないといけません。そのためには、スケジュールを調整したり、周りの人の仕事や家庭の事情を思いやったりすることも大切。根底に仲間意識があるので疎外感とは無縁です。そんな人には、役割や目的のようなものがあるはずです」
最近、キレやすくなったなぁ……。そう思ったり、周りに指摘されたりする人は、麻雀や将棋などで前頭葉を鍛え直した方がいい。