著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

新型コロナの世界的な大流行は米中の経済戦争が影響している

公開日: 更新日:

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に歯止めがかかりません。各国が対策に追われている中、日本での感染者数に対する死亡率が低いことが注目されています。厚生労働省の発表によると、日本での死亡率は1・9%(8月21日現在)で、3%を超えている米国など欧米の先進国と比べて明らかに低い数字が出ているのです。

 日本で新型コロナウイルス感染症による死亡者が少ない理由はどこにあるのか。ノーベル医学生理学賞を受賞している京都大学の山中伸弥教授が指摘した「ファクターX」については、専門家がさまざまな意見を話しています。もちろん、理由はいくつもあるでしょう。そのうえで、私は「日本は社会全体が極端に2つに分かれてはいない」ところに一因があるのではないかと考えています。

 今の日本では、多少は所得格差やイデオロギーの違いがあるとはいえ、これらが分断するように2つに近い状態で分かれているわけではありません。そして、そのように極端に二分されている国では、たとえば米国など医療水準が一定レベルにある先進国であっても、死亡率が高くなっているのが事実なのです。貧困層や生活水準の低い層が、適切な医療を受けられなかったり、日頃から健康状態がハイリスクだった可能性が高く、死亡率を押し上げていると考えられるのです。新型コロナウイルス感染症で、死亡リスクが高くなるのは、超高齢者と基礎疾患がある人です。日本も含めたある程度の医療水準を維持している先進国では、高齢者が多く、高血圧や高血糖など生活習慣に関連した基礎疾患を持つ人が増えている傾向があります。つまり、新型コロナウイルスによる死亡リスクが高いゾーンの人口が多いのです。そうした“土台”に加え、社会全体が二分されている国では、生活水準が低い層の死亡数が上乗せされるため、その分だけトータルの死亡率が上がるというわけです。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」