「心不全」は高血圧や糖尿病の薬で治す時代になってきた
「現在、心不全そのものを完全に治す治療はありません。原因になっている疾患を管理したうえで、肺などの内臓に血液がたまるうっ血を改善することと、心臓からの血液駆出量を保持して末梢循環を良くすることが大事なので、塩分や水分の摂取を制限する『生活管理』や、心機能を改善させて心不全症状を軽減する『薬物治療』が中心になります。とはいえ、いまは心不全に使われる薬がかなり進歩していて、入院の回数を減らし、生命予後を延ばす効果があることもわかっています」
かつて心不全の薬物治療では、心臓の収縮力を高めるアドレナリンやジギタリスなどの「強心薬」や、うっ血を取り除いて心臓の負担を減らす「利尿薬」が使用されていた。しかし、いずれも一時しのぎで長期的な効果はないうえ、利尿薬には腎機能を低下させるリスクもある。
■さまざまな作用機序の薬が続々と登場
「それが近年、さまざまな作用機序を持った治療薬が登場し、心不全の標準治療として確立されてきています。交感神経を抑えて心臓の動きを休めながら機能を回復させる作用がある『β遮断薬』、血圧を上げ心不全を増悪させる神経体液性因子レニン・アンジオテンシン系の働きを抑えて心臓を保護する『アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬』や『アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)』、アルドステロンというホルモンの働きを抑制して水分を体外に排出し血圧を下げる『ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬』といった薬が使われます」