「心不全」は高血圧や糖尿病の薬で治す時代になってきた

公開日: 更新日:

 さらに最近は、電気信号により心臓を刺激する洞結節の興奮を抑えて心拍数を減らし、心臓の負担を軽減する「HCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)チャネル遮断薬」や、ACE阻害薬やARBと同じくレニン・アンジオテンシン系の過剰な活性化を抑えつつ、心不全治療作用がある脳性利尿ホルモン(BNP)の分解を阻害する「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」といった新たな薬が登場した。大規模臨床試験では、ARNI投与群は心不全による再入院と心血管死がACE阻害薬投与群よりも2割減少したことが報告されている。

 また、糖尿病治療薬として開発された「SGLT2阻害薬」も心不全の治療薬として承認された。

「SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管で糖を再吸収する役割を担っているSGLT2の働きを阻害し、血液中の余分な糖をナトリウムと一緒に排出させることで血糖を下げる効果があります。それ以外にも、利尿、酸化ストレス低下、血圧低下、腎機能の改善、体重の減少といったさまざまな作用があり、海外の臨床試験ではSGLT2阻害薬の使用で心不全による入院のリスクが35%低下したことが報告されています。先に説明したACE阻害薬やARB、新たに登場したARNIは高血圧症の治療薬でもありますから、心不全に対して糖尿病や高血圧の薬で立ち向かう時代になったといえるでしょう」

 実際に東丸氏は、これらの薬を適切に使用したことで、心不全の状態が一気に改善したケースも経験しているという。

 治療薬の進歩は心不全の患者にとって光明といえそうだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝