著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

コレラをめぐる「病態生理」と「疫学的事実」の対立…コッホとペッテンコーフェル

公開日: 更新日:

 前回、病態生理学的に正しい情報と疫学的、統計学的に正しい情報について説明したが、前者は個別の患者の体で起きていることを説明しやすいし、後者は集団で何が起きているかを示している。この2つの正しさは時に対立する。今回はその対立に関する歴史的な事件について紹介しよう。

 まずペッテンコーフェルから。一般の人にはなじみがないが、彼はコレラの流行と闘った19世紀のドイツの衛生学者である。

 ミュンヘン大学の衛生学の教授として、コレラの原因を土壌汚染と考え、下水道の整備やごみ処理に取り組んだ衛生学の創始者のひとりといって差し支えないと思うが、あまりそのような取り上げ方はされていない。

 彼が取り上げられるのは、自らコレラ菌を飲み、菌がコレラの原因であるかどうか自らの体を用いて検証しようとした、その行為によってである。

 それに対してコッホはあまりに有名だろう。結核菌の発見をはじめ、細菌学の父として多くの人が知る細菌学者だ。ノーベル医学生理学賞を受賞し、破傷風抗毒素やペスト菌を発見した日本の細菌学の父、北里柴三郎の師匠でもある。コッホは、ペッテンコーフェルがコレラと闘うさなか、コレラ菌を発見する。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性