著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

コロナと「EBM=根拠に基づく医療」の実践 高血圧の治療がきっかけ

公開日: 更新日:

 判断や行動より考えることを重視することは、私自身が常々考えてきたことだが、そのきっかけとなったのは、根拠に基づく医療「Evidence-Based Medicine:EBM」を実践する中で、論文を読んで勉強すればするほど、判断が困難になる、どうしていいか迷うようになるという壁に突き当たったことだ。

 高血圧の患者を前にして、降圧薬を出すか出さないか、それに正解はない。その時々で適当にやるほかない。適当にするので、それでよかったのかと振り返らざるを得ない。判断が重要というのはその場のことに過ぎなくて、過ぎてしまえばさして重要ではない。重要なのはむしろ次にどうするかである。そこでまた勉強を続けるわけだが、それで結論が得られるわけではない。次にどうするかといっても、次も似たように適当にするほかない。

 30年以上にわたってそんなことを続けてきたが、そこで明確になったのは、いくら勉強したところで正解を求めることはできない。できるのは勉強し続けることであり、それをもとに考え続けることだけだ。実際の対応はいつも適当で構わない。ただそこで患者との相談は重要で、相談できれば、どういう判断をするかは問題ではない。判断はいつも暫定的なもので、患者自身もまた考え続けることで、判断や行動をいつでも変えることができる。そういう自由が重要ということであった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希はロッテの「足枷」だった…いなくなってFA石川柊太の入団がもたらす“これだけのメリット”

  2. 2

    絶対守護神マルティネス「巨人入り」急浮上の舞台裏…米敏腕記者が「2年24億円で合意間近」と

  3. 3

    フジテレビが2番組を終了させダウンタウン松本人志に「NO」を突き付けたワケ…日テレとは異なる対応

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  5. 5

    米倉涼子「ドクターX」興収30億円でも満島ひかりが阻む"興収女王"の座…期待値の高さから落胆の声も

  1. 6

    立花孝志氏が大阪・泉大津市長選で惨敗…有権者の投票行動を後押しした「お笑いみたいな噂」

  2. 7

    佐々木朗希の「独りよがりの石頭」を球団OB指摘…ダルやイチローが争奪戦参戦でも説得は苦戦必至

  3. 8

    安倍昭恵氏が石破外交“切り札”に? 米トランプ次期大統領との会談模索に「私人」を担ぎ出す情けなさ

  4. 9

    安倍昭恵さん×トランプ夫妻「夕食会」の舞台裏…永田町で飛び交う臆測と“パイプ役”の名前

  5. 10

    M-1グランプリ審査員は“完璧な布陣”…ますます高まる「松本人志不要論」