名郷直樹
著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

医学的に正しい情報とは…「病態生理学的正しさ」と「疫学的正しさ」の違い

公開日: 更新日:

 医療は凄まじい勢いで変化しているかに見える。半面、人間は一向に変わっていない。1990年にスタートした「ヒトゲノム計画」を端緒に「ゲノムサイエンス」が進み、それを土台とした「ゲノム情報」を基にした患者の「個別化医療」が勢いを増している。これは集団のデータを個人に当てはめる医療の限界が明らかになりつつあるなかで生まれたため、何か素晴らしい新しい医療が誕生し、人を幸せに導くように見える。

 しかし、ゲノム情報もしょせんリスク、確率で表されるにすぎず、一度しかない個別の人生の最適な解など、そもそも存在するかどうかもわからない。医学情報と個人の幸福のギャップはたいして埋まってはいないのである。そんななか、私たちは医療の正しさの意味とその限界を知り、個人の幸せのあり方を改めて考えなければならない。本連載はそのためのものである。

 前回、高血圧に対する「正しい情報」の一部について説明した。「ランダム化比較試験で、高血圧を治療することで脳卒中が予防できるという結果が示された」という情報である。これは「医学的に正しい情報」のひとつではあるが、唯一の「正しい情報」ではない。むしろある立場での限られた「正しい情報」に過ぎないといった方がよい。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    巨人入り若林楽人「4番気取り」なら新天地でも“塩漬け”不可避…打撃に求められる意識改革

    巨人入り若林楽人「4番気取り」なら新天地でも“塩漬け”不可避…打撃に求められる意識改革

  2. 2
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  3. 3
    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

  4. 4
    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

  5. 5
    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚

    マイナンバー「1兆円利権」山分け 制度設計7社と天下り官僚会員限定記事

  1. 6
    巨人が「同ポジション」緊急トレードで企む真の狙い…松原を西武に放出、若林を獲得

    巨人が「同ポジション」緊急トレードで企む真の狙い…松原を西武に放出、若林を獲得

  2. 7
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  3. 8
    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

  4. 9
    永尾柚乃はもはや子役にあらず …すでに「助演女優レベル」の納得エピソード

    永尾柚乃はもはや子役にあらず …すでに「助演女優レベル」の納得エピソード

  5. 10
    高橋一生「ブラック・ジャック」の不安材料? ドクター・キリコ=石橋静河にやはり疑問の声

    高橋一生「ブラック・ジャック」の不安材料? ドクター・キリコ=石橋静河にやはり疑問の声