認知症患者の「夜、寝ない」問題…介護する家族にアドバイスしていること
夜中に寝てくれず、起こされる家族は寝不足
「お義父さんが夜寝てくれない。夜中に何度も『おーい、だれかいないかー』と家族を呼ぶのです。寝不足でつらい」
これは、あるお嫁さんの訴えです。
お義父さんがアルツハイマー病と診断されたのが1年ほど前。夫や高校生の息子も介護に参加しており、お嫁さんのワンオペではないのですが、夫も息子も会社、学校がある。夜中に起き出してくるお義父さんに対応できるのは、専業主婦である自分だけ、とのこと。
認知症患者さんには、睡眠障害がよく見られます。以前もこの欄で触れましたね。加齢で浅い眠り(レム睡眠)の割合が増え、中途覚醒が多くなりますし、活動量が低下して昼寝の時間が増え、夜の睡眠の質が悪くなる。高齢者には、睡眠障害をもたらす病気のリスクも高くなります。理由はさまざま挙げられます。
質の良い睡眠を取ることはいろんな意味で重要です。十分な睡眠は、脳と体の疲れを取り、免疫力維持に役立ちます。あまり眠れていないと、イライラしたり興奮したりと、メンタル面で不調が生じます。
睡眠不足は、アルツハイマー病のリスク因子でもあります。アルツハイマー病の発症に関係する老廃物アミロイドβは、寝ている間に代謝、分解されて脳の外へ排出されます。睡眠時間が短いと、その排泄が遅れ、寝不足状態が続くと、アミロイドβがどんどん蓄積されていくのです。
動物実験の結果で、睡眠時間を短くしたラットの脳には、アミロイドβがたまってしまうことが分かっています。人間でも、一晩寝不足になれば、それだけでアミロイドβの蓄積が増えるというデータがあります。