「海馬の萎縮=アルツハイマー病」とは限らない 慎重な鑑別が必要
認知症とは、いったん獲得した認知機能(記憶や判断、計算など)が低下することで、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態です。
「認知症=アルツハイマー病」と思われがちですが、認知症の中にもさまざまな病気があります。
もう少し付け加えると、画像検査で海馬の萎縮が見られると「海馬の萎縮=アルツハイマー病」とされやすい。確かにアルツハイマー病は脳の海馬から萎縮していきやすいのですが、イコールで結びつけてしまうと、間違った診断につながりかねません。
たとえば、認知症のひとつである前頭側頭型認知症。ピック病とも呼ばれるこの病気は、前頭葉や側頭葉のいずれかが萎縮し始めることで発症します。ただ、患者さんによっては頭部CTを見たとき、前頭葉・側頭葉の萎縮に伴い、海馬の萎縮も起こっているケースがあります。
その海馬の萎縮が、アルツハイマー病の患者さんのCTと比較しても強かったりすると、認知症を普段から診ている医師でもアルツハイマー病と診断してしまう可能性があります。
前頭側頭型認知症は、アルツハイマー病の進行を遅らせる抗認知症薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)の有用性は示されておらず、むしろ症状が強く出てしまうこともあります。どんな薬でも副作用のリスクがありますから、安易に処方するのは避けなくてはならない。
そういった意味でも、認知症と診断した場合、認知症の中でもどの病気に該当するのか、慎重に鑑別診断を行わなければなりません。