糖尿病の人は死にたくなければ…膵臓がん検査を忘れてはいけない!
2型糖尿病の患者さんは膵臓がんが発生しやすく、膵臓がんになった人は1型糖尿病になりやすいことが知られています。2型糖尿病の薬の進歩は目覚ましく、糖尿病で亡くなる人は激減しておりますが、膵臓がんはとても予後が悪いがんの代表です。
初診時に手術可能な症例は20%程度とされ、その手術できた人でも5年生存率は20%程度、進行している膵臓がんの長期生存はとてもまれとされております。
実際、全国がんセンター協議会のデータで、膵臓がんの5年生存率は、すべてのステージを含めた全体で9.9%しかありません。
膵臓にできるがんのうち90%以上は、膵液の通り道にできる膵管がんのことを指し、これが予後不良タイプです。他に、神経内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあり、Apple社のスティーブ・ジョブズ氏は神経内分泌腫瘍だったといわれています。
膵臓がんが予後不良な原因は、膵臓はリンパが豊富なため、リンパ節転移を起こしやすく、膵臓の血流は門脈を介して肝臓に向かうことから、肝転移もおこしやすいのです。また、体の奥深くにあるため、胃や腸に隠れて見つけづらく、手術しにくいことも挙げられます。
2型糖尿病では突然血糖のコントロールが悪くなって、膵臓がんが見つかるケースは決して珍しくありません。糖尿病患者さんは一般の人と比べて、膵臓がんを2倍発症しやすいとされています。
このことから糖尿病の管理にはただ血糖をコントロールするだけでなく、膵臓がんのチェックをしていくことが必要です。
「腹部超音波検査」(エコー)は、膵臓を調べる検査としてもっとも一般的です。膵臓がんを発症すると、膵管の拡張が起こりやすいことが知られています。MRIのほうがより発見しやすいとのことですが、簡便さ、およびコストの面からもまずはエコーで調べ、必要に応じてMRIや超音波内視鏡で精査するのが一般的かと思います。
最近はメタボの人も多く、脂肪肝の人も珍しくありません。脂肪肝は公的保険でエコーだけでなく、CTやMRIを受けられます。「膵臓も診てください」とお願いするとよいでしょう。
なかには、急激な痩せを伴い、膵臓がんの発症とともに血糖コントロールが悪くなってインスリン治療を受けられる患者さんもいらっしゃいます。膵臓がんができたことで、インスリンがまったく出なくなるケースもあります。
治療やがんの進行に伴って発症する場合もあります。私が経験した例がまさにそう。がんが進行し、腹水もあり、ほとんど食べられない状態にもかかわらず、強い口渇を訴え、血糖値が800まで上昇した患者さんもおられました。
早期の膵臓がんが見つかった場合は通常は手術を行い、その後抗がん剤を行うのが一般的です。
近年、放射線治療装置の進歩で、より精度の高い、そして高線量の放射線治療が行われつつあります。実際に2020年からは定位放射線治療(ピンポイント照射)が保険適用されるようになりました。
その結果、「今まで放射線治療で膵臓がんが治らなかったのは線量が足らなかったためではないか」と推測できるようなデータが集まりつつあります。